山田 愼一
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人の代表司法書士。
保有資格:司法書士/行政書士/家族信託専門士/M&Aシニアエキスパート
財産管理委任契約と家族信託は、似た働きを持っています。
たとえば、父親の不動産を息子が売却をするというケースで、父親は息子に売却を「委任」することで、息子が売却をできるようになるものです。
これは、家族信託と同じようにも見えます。
父親が「委託者」となり、息子が「受託者」となり財産を管理するパターンです。
一方、最大の両者の違いは、財産管理委任契約が「本人の判断能力があることを前提」としているのに対し、家族信託は「本人の判断能力が低下しても継続することを前提」としている点です。
これは、何を意味しているのかというと、財産管理委任契約は事実上、「本人が判断能力が低下した後は使えない」契約であるということです。
父親と息子の間で、銀行口座の名義変更を行う委任契約、もしくは不動産を処分する委任契約を結んだとしましょう。
このとき、父親と息子間では委任契約は行われていますが、銀行口座・不動産の名義は以前と変わらず父親のままです。
そのため、どちらの場合も本人確認を求められます。
父親が元気なうちは、本人確認が可能ですが、認知症になってしまうと本人確認をとることが不可能となります。
そのため、本人確認ができない以上、委任契約があったとしても息子は名義変更を行うことも不動産を処分することもできません。
一方、家族信託の場合、信託を開始した時点で信託財産は、父親(委託者)の名義から息子(受託者)の名義に変更されます。そのため、認知症対策に備えた長期的な財産管理を希望する場合には、家族信託の方が有効であると言えます。
相続の相談件数は業界でもトップクラスの年間1800件のグリーン司法書士法人 の代表司法書士。
一般の方向けのセミナーの講師や、司法書士や税理士等専門家向けのセミナー講師も多数手がける。オーダーメイドの家族信託を使った生前対策や、不動産・法人を活用した生前対策が得意である。